2003年4月

Technology Newsline

インクジェット印刷を進化させるエプソンの顔料インク(要旨)


インクジェットプリンタのメーカーは、何年もの間、プリント技術向上や新機能追加に多大な精力を注いできた。しかし、
ユーザーがプリンタを購入して実際に文書や画像、写真を印刷する上で最も基本的な技術――つまり、インクそのもの
にはさほど関心が払われてこなかった。エプソンは数年前、革新的な新世代顔料インク「DURABrite (日本名:PXイン
ク)」を開発、続いてこれをさらに改良した最新インクを投入し、状況を一変させた。









染料インクの場合、出来上がったばかりの印刷物に誤って水滴をこぼしただけでどうなるか、経験のある人はよく知っ
ていることだろう。同様に、湿気に対しても弱い。これは染料インクが水溶性で、耐水性が低いためだ。「これとは対
照に、顔料ベースのDURABriteインクは疎水性のため、耐水性はほとんど完璧です」と、情報画像事業本部の碓井稔
副事業本部長は言う。このため、DURABriteはチラシ、表示サイン、メニュー、ハガキといった水や湿気にさらされる可
能性のある印刷物の制作には理想的なインクだと言う。



染料と顔料の2種類のインクについては、光によって受ける損傷についても同じことが言える。「DURABriteは、染料タイ
プに比べてインク粒子がはるかに大きいという特徴があります。印刷物を光に長期間さらした場合、まずインク粒子の
外縁が光の攻撃を受けます。その結果、色褪せが始まるわけです。DURABriteは粒子が大きいため、各粒子の内部
の色材がより長時間保たれ、印刷物や画像の発色が長持ちするのです」と碓井氏は説明する。粒子が大きいという
DURABriteの特性は、インクの耐ガス性の維持にも貢献している。画像や印字の色分解や退色を引き起こす、オゾン
などの大気ガスからの攻撃にも強いのだ。



インクの耐久性と安定性をさらに高めるため、技術者たちはDURABriteの粒子を樹脂でコーティングし、カプセル化す
る過程を追加した。これにより、樹脂がインクの保護膜となるほか、紙やその他媒体にインクが吸着しやすくなるとい
う、2つの利点があるのだ。



さらに顔料インク特有の利点は、顔料粒子が紙の表面にきちんと定着することである。染料インクは紙の繊維に比較
的深く浸透する傾向があるため、色がにじんでしまう。しかし、DURABriteの顔料粒子は紙の表面に強く吸着するため、
テキストや画像のシャープさや色鮮やかさが失われないというわけだ。粒子が紙の奥まで浸透しないということは、染料
インクにありがちな「裏映り」の現象が少ないということでもある。



エプソンはまた、DURABriteを普通紙やマット紙向けに最適化し、ユーザーが高価な用紙を買わなくても高品位な印刷
が出来るようにした。通常の顔料インク用の樹脂は、顔料が溶媒(インク液)に分散されやすいよう親水性なのだが、(こ
の親水性が原因で)インク粒子が紙に浸透してしまい、色再現性が損なわれていた。「しかし、私たちはDURABriteの樹
脂を再改良し、疎水性を持たせることに成功しました」と碓井氏は説明する。「これにより、DURABrite顔料は普通紙に
含まれるサイズ剤の上にも吸着し、紙の表面にインクがきちんと載るようになったため、より忠実な色再現が可能にな
りました」。同時に、DURABriteは光沢系、および半光沢仕上げの用紙でも高品位印刷を実現、「印刷可能なメディアの
種類がこれまでになく広がった」という。



現時点で、プリンタユーザーにこれら全ての利点を提供できるのはエプソンのみ。それは同社のプリントヘッド技術に
理由がある。エプソンのインクジェットプリンタは業界で唯一、ピエゾ素子に電圧を加えてインクを吐出する、マイクロピ
エゾ方式のヘッドを搭載しているのだ。一方、熱を加えてインクを吐出する方法を採用している競合インクジェットプリン
タメーカーにとっては、熱に弱い顔料インクを採用するのは難しいだろう。







(原文は英語。取材/英文執筆:ジョン・ボイド) 


*本稿の内容は執筆時点(2003年3月)の情報に基づくものです。



  販売方法  商品一覧     商品のご使用方法